前回の五行のコラムから、大変お待たせしてしまいました。
東洋医学も実践的なお話の方がもっと楽しいのですが、
まず基本が分からないと実践的な話が理解出来ないと思いますので、まだまだ基本から説明していきます。
陰陽や五行など東洋医学の考え方は、占いだけでなく、天文や農業、建築、政治・経済など様々な分野で使われています。
なのでコラムでも、健康や身体の仕組み・自然のリズム以外でも、東洋の思想が使われている具体例も出しながら書いていきますね。
さて、今回は陰陽です。
太極図と言われる陰陽思想のマークです。
陰陽の意味や性質がこの図に集約されています。
簡単にまとめると、
○一つの円の中に陰と陽の2つの相反するものがあり、それらが調和している様子を表します。
○互いに互いなしでは成り立たないし、相反するものが合わさって新しいものを生みだします。
○陰の中に陽があり、陽の中にも陰があるという事も表してします。
○陰が最も盛んな時に少し陽が生まれ始め、陽が最も盛んな時に陰が少しずつ生まれ始めています。
(陰陽はとどまらず常に動いて変化しているということ)
○陰が極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転じる様子も表しています。
(物事は極点に達すれば、必ず逆方向に動き始めるという意味です。 )
最後の2つを分かりやすく具体例で説明しているのが、以下の四季の陰陽の盛衰・転化の図↓です。
1年で1番日照時間が長く陽気が極まる日が夏至。
この日を境に日照時間は短くなり、陽気の量は減っていきます。
同じく1番日照時間が短く陰気が多い日が冬至で、この日を境に日照時間は増え、陰気は減っていきます。
気温は、日照時間に少し遅れてピークを迎え、変化していきます。
人体の中では交感神経と副交感神経が1日の中で、同じように変化しています。
このように陰と陽は互いに依存しあい、拮抗し合い、消長し合うというのが、陰陽思想の基本の概念です。
太極図はこの辺りで終わりにして、
東洋医学では様々な事象を陰陽に分類します。
元々は
日が当たる方が陽
陰(かげ)になるのが陰
ということから発生した考え方です。
ですので、例えば身体ではお腹側は陰、背中側は陽です。
他にも、陰陽の分類の例としては
陰 : 月 女 マイナス 静的 副交感神経 暗い 寒 裏 下降 夜
陽 : 太陽 男 プラス 動的 交感神経 明るい 熱 表 上昇 昼
というようになり、様々な事象が無限に陰と陽に分類できます。
そして、ここで豆知識ですが、
陰を中国語で阴、陽を阳と、
阝に月と日で書くのですが、
陰陽の月日と、五行の木火土金水を合わせて、
月火水木金土日の七曜になります。
実は七曜は陰陽五行なんです!
このように陰と陽は、どちらも無くてはならないものなので、どちらが良いとか悪いとかはないのですが、
実は身体の中では、優先度が高い順位があるのです。
みなさんは、陰と陽とどちらだと思いますか?
正解は・・・・
陰なのです!
東洋医学では、陰にあたる五臓(肝・心・脾・肺・腎)は、陽にあたる六腑(胆・小腸・三焦・胃・大腸・膀胱)より重要とされていて、身体は五臓を中心に動いていると考えます。
例えば、五臓の肝が頑張り過ぎて邪熱を持ち過ぎた場合、その対応する腑である胆に邪を逃します。
同様に心に熱を持ち過ぎた場合は小腸に、という風に邪や熱を逃がします。
このように身体の中では、陰である五臓が優位に動き、陽である六腑は裏で五臓を支えてくれているのです。
ミツバチなどの虫でも、陰である女王蜂の為に陽である男性の働きバチが働くというのが、自然界の法則でもあります。
また、陰の五臓の中でも1番大切なのは心であり、
肺と肝でも陰陽に分けられ、
陽である肝の暴走を抑えるのが、陰の肺であり、
陽である男は肝の生き物と言われ、じっとしているのが苦手で動き回りやすく、
陰である女は肺の生き物で、じっとする事ができ男の暴走を抑える性質があるというのも、
陰陽とは面白いし、実に上手く分けられているなと思います。
陰と陽だったら、陽の方が明るくてプラスなイメージがありますが、陰の方が大事に守られているのですね。
最後に、大事な考え方なので是非覚えて欲しいのですが、陰と陽は相対的なものだということです。
陰と陽は西洋医学のように数値で決められなくて、
臨床では相対的に陰が減って出る症状や、相対的に陽が増えて出る症状などがあります。
例をあげると陰虚内熱による寝汗の症状があります。
水分摂取が足りなくて、相対的に水分(陰)が減って、熱(陽)が盛んになって汗が出るのです。
水分はしっかり採ってますという方でも、カフェインの入った緑茶やコーヒーしか飲まないという人も結構多くて、
カフェインの入った飲み物は利尿作用があるので、細胞や体内に吸収されずおしっこで出てしまい、
細胞や血管内は乾いているという状態になり、寝汗が酷いという人もいました。
陰陽の考え方は大事な所なので、今回のコラムは長くなりました。
次のコラムは病因論の②に戻りたいと思います。
皆さまの健康のお役に立てますように。
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